「さぁメアリー、海上に行って人魚界では味わえない世界を見てきなさい。」

お父様は、私を抱きしめて言ってくれました。

「はい。行ってきます。」

メアリーは、貝殻のネックレスを首につけ、

笑顔で答えました。

「メアリー、絶対に掟を守るんだぞ?人間は恐ろしいヤツなんだ。」

さっきまで笑顔だった王様の顔は真剣になっていました。

「わかってます。」

メアリーのお母さんは、人間によって殺されてしまいました。

それは、メアリーがまだ8歳の時でした。

「では、行ってきなさい。」

お父様は私から腕を放し、頬にそっとキスをしてくれました。

「行ってきます。」

メアリーは、上へと泳いでいきました。

『メアリー姫、行ってらっしゃい!』

『楽しんできてください。』

下から、みんなの声が聞えます。

メアリーは、どんどん尾びれを早く動かし、

海上へと向かいました。

気づけば、青い海の中に淡いピンクの尾びれをもったメアリーしか周りにはいませんでした。