愛なんて無かった



『彼』がクスッと小さく笑ったと思ったら止まっていた空気が動きだした。



「飯でもいかね?」


そう言ってあたしの肩を抱いて歩き出した『彼』に不思議と懐かしさを感じた。



「……あたしの予定は聞かない訳?」

「あー、予定あんの?」


そう聞く割には肩は抱いたままだし、歩く速度も緩めない。


言われるまま聞いてみただけ、という感じで一応問いかける。


「…待ち合わせ、とか?」

「なんで疑問系?」

「何となく…」