一匹狼と無邪気なワンコ



 でも心の中は緊張と不安でいっぱいだった。


 親父さんに何を言われるだろう、なんて謝ろう――そればかり。


「あの――あの、すいません」


 勇気を振り絞って声をかける。


 振り返ったその顔は、どこか狼の面影があった。

 
 狼が歳とったらこんな感じになるんだろうな、って思った。



「君は――あぁ、小野寺君かな?」


「はい」


 そういって頭を下げる。