一匹狼と無邪気なワンコ


 台所へ向かったのち、果物ナイフを手に戻ってきた。


「りっくん。お誕生日おめでとう」


 母親は引きつった笑顔でそう言った。


「うん!!」


 俺は母親がまた愛称で呼んでくれた事が嬉しくて、満面の笑みで頷いた。



「でも……今日で終わりにするね」


 ――直後、母親はケーキナイフを自分の首へと突き刺した。


 血が噴き出ても、これでもかといわんばかりに深く、深く突き刺した。


 まるで見世物を見せているように、俺の目をしっかりと見つめながら。