「あの日助けてくれた男の子が
亮君なんて・・・。このこと
温人は・・・。」



 「温人には話してないよ。
 話そうとも思わない。 」



 「話さないの?」



 「話してどうなるんだよ。
ずっと好きだった女の子が
その相手に気付いた時は親友の彼女で、
温人と真幸はもうすぐ結婚する。 
その事実は変わらない。 」



 「何言ってるの?
わたしにとっては淡い思い出。 
初恋だったけど亮君にとっては
あの日初めてあったいじめられっ子の
女の子。
 ずっと好きだったなんて・・・。」



 「やっぱり何も気づいて
なかったんだね。
たった1度会っただけの
女の子との約束なんて覚えてると
思う?」



 「嫌味? 1度しか会ったことのない
男の子との約束果たしにきた
わたしって馬鹿みたいじゃない。」



 「そんなこと言ってる訳じゃないだろう。
僕はあの日の前から君を見ていたんだ。 
いじめられてた君も。 学校の帰り道
必ず寄る公園の花壇。
ベンチに座っていつも散歩に来る
ダックスの子犬を待ってたこと。」


 「そんな・・・。あの頃のわたしにとって
友達っていったらあの子犬だったの。」



 「知ってるよ。 
子犬と遊んでる時の真幸は
本当に本当に楽しそうだった。」