コン コン

「長、リグルです。」

「リグルか、入りなさい。」

ドアを開けると、自分の借りた部屋とは全てが違っていた。

目の前に、長の座るソファーがあるが、そこまでに軽く20歩はあるだろう。

自分の部屋より数倍広く、飾りや置物に目を奪われ、呆気に取られた。

「驚いたかね。」

にこりと笑う長に目を向け、いかにも高そうな絨毯の上を歩いた。

「はい。さすが、この街の長だけありますね。」

すとんと、二人は裕に座れるソファーに腰掛け、目の前の長を見る。

「そんなことないさ。たまたま、この街の長になって、たまたま、私なんかが役に立っているだけじゃ。偶然が重なった産物、それがこのような形で現れた、というわけじゃよ。まぁ私は、この街が好きだから、この街を守らなくては、ならないんだよ。この苦境から。」

遠くを眺めながら長は呟く。その言葉に、リグルは少し違和感を感じた。

「この苦境?」