時計をチラチラ見ながら、ご飯を口にかきこむ。
「おいおい、よく噛んで食えよ~」
「が、がっげぎがんががぎんがご(だ、だって時間がないんだもん)」
そう、確かに時間がない。
今は、7時55分。体育館整列は、8時05分。
「ご、ごちそうさま!!」
時間がないくせに、ご飯2杯も食ってる。
そんな妹が面白いのか、兄がクスクスと笑い出す。
それに気づいた塔子は、兄を睨み、大声を張り上げ、玄関を出て行った。
「いってきまーす!!」
「おぅ。あとで行くからな。」
「よけいなお世話ですーー!!・・・なんてね!」
時間を忘れて、余計な付けたしまでしてしまう。

しばらくして、時計が目に入った。
ようやく我に返り、全速力で走る。
桜の花びらが春風にのって、あたし顔に当たる。
うざっとうしく、顔を拭う。
そして、ひたすら走る。
しばらくすると、住宅街の中からひょっこりと中学校が出てきた。
「ふぇ~~、おっきい~」
小学校とは全く大きさの違う中学校に、ビックリして、呆然と立ち尽くす。
しばらくすると、背中をトン、と押された。
後ろを振り返ると、ニッコリと笑う美人さんが立っていた。
「おはよっ」
彼女はあたしの親友、真里菜。腰まである髪の毛を、後ろでポニーテールにしてる。
「あぁ、お、おはよう」
「だいぶ緊張してるみたいだね」
見透かされてるような気分だった。
さすがあたしの親友。あたしの事よく分かっている。
「ほらっ、早くしないと、入学式始まっちゃうよ」
真里菜の指差す方を見ると、ぞろぞろと体育館に入っていく、新入生らしき人たちが見えた。
真里菜はあたしの手を引っ張り、走る。
・・・とうとう始まるんだ。あたしの中学ライフが・・・。
期待に胸を膨らませ、桜並木を通り越して、新しいスタートラインに立とうとしていた。