萌架が目を覚ました時、つい間近で見ていた。


しかし萌架は『信じられない』といった感じの顔を見せた後、顔を歪めて視線を逸らされた。


理由が分からないからどういう反応をとればいいのかも分からない。


こんなにももどかしい思いをしたのは初めてだ。




………あ。


「萌架? その跡…どうしたんだよ?」


そう言って涙の跡を拭おうと手を伸ばしたがそれは触れることはなかった。


萌架に振り払われてしまったからだ………。


予想外の出来事にどうしたらいいのか余計に分からなくなった。


振り払われてしまった手は…空中をさ迷って下に垂れ下がったのだった。


小さく「…ゴメン」とだけ言われて萌架は走って看護実習室を出て行ったのだった。




予想外の出来事が重なり過ぎて頭がついていかない。


萌架の香りが仄かに残っている看護実習室の中でオレは動けずにいた。




一体何がオレ達の仲を狂わせた?


何が足りなかった?


そんな思いが頭の中を駆け巡るのだった。




何が狂わせたのか…何が足りなかったのか………それは後に分かることになるのだった。





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