………いない?


辺りを見回しても誰ひとり、影形すら見当たらない。


諦めて出ようとドアに手をかけた時、静かな看護実習室から寝息らしき音が聞こえた。


不思議に思い振り返るがやはり誰もいない。


だが、確かに寝息らしき音が聞こえるのだ。


この位置からちょうど見えない場所に誰かいるのか?


死角になってる場所は…こちらに背面を向けているソファーくらいだ。


そっと近寄ってみた。


聞こえている寝息は近づくほど大きくなっていく。




ソファーを覗き込んだら…いた。


猫みたいにソファーの上で丸まって寝ているではないか。


その寝顔を見て優しい笑みが零れたのはオレだけの秘密。


だけど…いつもと何かが違うように感じる。


マジマジと顔を見ると目尻から頬にかけて涙の跡がある。


もしかして…泣いた?


なんでオレに隠れて泣いたんだ?


どうしてオレに何も教えてくれないんだ?


分からねぇ………。


萌架の考えてること、全然分かんねぇよ…。


話してくれなきゃ分かんねぇ。


もっとオレを頼ってくれよ。





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