けど…今は会いたくなかった。


顔を小さく歪めて充から視線を逸らした。


今見たら…思ってないことまで言ってしまう。


お願いだから………何も聞かずにここを出ていって。


その願いは儚く散るのだった。




「萌架? その跡…どうしたんだよ?」


充が指してるのは多分、頬にある涙の跡のことだろう。


その涙の跡を拭おうと手を伸ばしてくれたのに…あたしは振り払ってしまった。


「…ゴメン」


それだけを言って走って看護実習室を出ていった。




裏庭に着き、お馴染みの木に登った。


「ハハ…あたし、馬鹿だ」


自嘲気味に笑った。


せっかく充が心配して手を伸ばしてくれたっていうのに…それを自ら遠ざけたのだから。


でも…そうでもしなきゃ、あたしが堪えられなかったんだ。


ねぇ、充?


充を好きになったのを後悔はしてないけど、こんな感情があるんなら知りたくなかったよ。


自分が自分じゃないみたいで…どうしたらいいのか分からない。


歪んだ感情と醜い自分の心に嫌気がさして仕方ない。



充…あなたはあともう少し…待ってくれますか?





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