震える手で封筒を持ち上げて中を開いた。


書かれていたシンプルな言葉。


だけど胸に突き刺さるような冷たさも含まれていた。




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今まで身元も分からないあたしを育ててくれて有難うございました

これからは一人で頑張ります

本当に有難うございました

どうかお元気で

さようなら


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何度見ても他人行儀な文。


俺達では萌架の心の傷を癒すことはできなかったのだと痛いほど、痛感させられた。


煉弥について来ていた狼龍メンバーも固まっていた。


感じたことのない痛みに…ただ堪えることしかできない。




何を思い立ったのか突然立ち上がってどこかに行ってしまった充。


誰も追いかけることはしなかった。


いや、正しくは萌架がいなくなったショックで追いかけることができなかったの方が正しいだろう。




充はただある場所に向かってがむしゃらに走っていた。


幼い頃、近所の女の子とよく遊んでいた公園に向かって。


もし、あの女の子と萌架が同じならあの場所に何かがあるはずだと信じて───…。





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