「……でも、やっぱり、いい男だったよ」

「救いようないね」


亜衣の優しさも、成くんの思いも、全部全部嬉しかった。

多分これは、悲しい涙じゃなくて、嬉しい涙なんだと思う。


「ナナ呼びつけて飲み直すか」

「うん、」


やっと落ち着いて、冷たいおしぼりで目を冷やしながら頷くと、亜衣がいきなり「ははっ」と吹き出した。


「な、なにっ」

「……いや、タマってつくづく格好悪いなぁって思って」

「ひっどい!」

「ずーっと想ってた相手にやっと会えたら結婚って、可哀想過ぎ」

「……っ、仕方ないじゃん」

「仕方ないから、次の相手探しは手伝ってやる」


笑った亜衣に、止まったはずの涙が湧き上がってくる。

自分がこんなに泣き虫だったことも知らなかった。