コイアイ〜幸せ〜

「松本さん、貴方はどうして、山下チーフを抜擢したんですか」


「適材適所、ですね」


足を組み替えながら、あの男は言う。


「私的秘書にしたいのなら、他にもやりたい奴はたくさんいたはずだ」


「ですから、適材適所というやつです」


この男の考えが読めない。俺は好奇心に負けた。


「山下チーフと、・・・付き合っているんですか」


ここで初めて、あの男の表情が、微かに変化した。

それは、侮辱を込めた冷たい眼差しだった。


「さぁ、どうでしょうか」


そして、俺に興味をなくす。


「時間です。仕事が立て混んでいますので、退室して頂けませんか」


冷静になれ。
一つ深呼吸をした。


「すいません、俺、失礼な事をいいました。山下チーフは、人の好き嫌いで仕事をするような女じゃありません。俺が惚れている女は、そんな女じゃない」



「そうですか」



言いたい事はたくさんある、わからない事だらけだ。

だからといって、これ以上何を言っても、今は無駄だということはわかった。



最後に一礼して部屋を出た。

自分のデスクに戻って、初めて手の平が汗ばんでいるのを感じた。
俺は、緊張していたんだ。