コイアイ〜幸せ〜

「松本さんがお相手しなくても、いいんですか?」


「別に俺たちがしなくても相手をしたい人間なら、たくさんいるだろうね」


「えぇ、そうですね。私も、まだまだ勉強不足で」


彼の指先が、つららさんのほつれた前髪をサラリと直す。

その光景に、俺の心がズキリと痛んだ。


「山下さん、言葉が棒読みです。そんなに俺の近くにいるのは嫌ですか?」


「えぇ、は・・・いや、そんなことはありません。私が自分でやっていることです。嫌なハズがあるわけないじゃないですか」


二人の声や仕草がはっきりとわかる位置にいるのに、つららさんは気づかない。


「これから挨拶まわりです、ついて来ますか?」


「勿論です」


仕事中だから仕方がない。
そう自分に言い聞かせてみても、なんとなくモヤモヤとした感情が沸き上がる。

いつもだったら、いたの、とか言われながら、俺に笑いかけてくれていた。


それが今は、真っ直ぐにアイツを見つめている。

俺を見ろよ。笑ってなくてもいいから。

・・・なんて子供じみた感情なんだ。


けれど、そう思えば思うほど、声が出せない。

二人の間に、割り込むことが出来ない。