宗助の車は私を乗せてゆっくりと走り出す。



…私たちは、いったい何処へ行くのだろう…。



先ほどの勢いもむなしく、静かな車内に、音楽だけが流れている。


「なぁ、つららさん、今の仕事は楽しい?」


運転中の宗助が、前を向いたまま、ボソリと呟いた。


「うん、楽しいっていうよりか、凄くね、やりがいは感じてる。今までが違うってわけではないの。これまでに積み重ねていたことが試されているっていうのかな、とにかく、私にとっては頑張れる場所なの」


横を向いて話すのも気がひけるので、宗助のハンドルを握る手を眺めながら、私も、ポソリポソリと答えた。


「そっか、つららさんらしいな」


また、会話がなくなる。


…。


「ねぇ宗助、言いたいことがあったら、私にちゃんと言ってね。だって宗助、私のこと避けているような気がするんだもん」


「私の勘違いだったら、別にいいの。だけどね、私が悲しいとき、嬉しいとき、けっこうそばにいてくれたでしょ。実はね、彼と別れたときにさ、宗助に泣いていいって言われて、初めて泣けたんだよ。すっごい泣いて、前を向くことが出来たんだ」