宗助は、少し私に近づいて軽く机に手を置いた。
そして、いつもより低い声で言葉を口にする。


「つららさん、簡単に男をその気にさせちゃ駄目だよ。…襲われても知らないからな」



…えっ?


今までの流れで、私、誰かを勘違いさせるような事をした?




少しの沈黙のあと、耐えかねたように宗助がため息をついた。



「はぁ、無自覚か」


???


「は?まさか、宗助をレストランに誘ったこと?だって、いつものことでしょ」


嘘。
ありえないんですけど。


「俺はいいの。それよりも、お前の部下の勘違いを心配して…」


な〜んだ、そのことか。


「何言ってんの。ありえないわよ、たかが仕事を褒めただけじゃない」


「それに、私には彼氏がいるって、宗助、知ってるでしょ」


宗助の言っている心配の意味がわからない。


「なにかあったら、彼氏に守って貰うから、大丈夫」


守ってもらうって。


言った自分が、少し恥ずかしくなっちゃった。
…もういい歳なんだから。






「…そう、だな。知ってる。守ってもらえば?」


そう言って、宗助は軽く笑う。


アイツがようやくいつもの顔に戻った。