「いち、にぃ、さん……なな、…はち」


ふわりとした自分の髪に、風が通り過ぎる。


私は指を折りながら、小さな声で数をかぞえていた。


「市田さん?何をかぞえているんですか?」


向かい側には、大好きなあの人がいる。


「いいえ、なんでもないんです。松本さん、風、気持ちいいですよね」


私は、彼の瞳を見ながら、できるだけ可愛く見えるように微笑んだ。


貴方と会った回数を数えていた、なんてことは言えないんです。


「えぇ、そうですね」


松本さんは、ちゃんと微笑み返してくれた。


今、私達は、素敵なカフェテラスにいる。


昨日の夜、私の携帯に松本さんからのメールが入っていた。
それはいつも突然で、私の都合なんておかまいなしだ。
タイミングなんてわからないから、今日の、友達との約束はキャンセルした。


会社で見かけても、こうして会えることは滅多にない。


私は、連絡をすれば会える女。


そんな都合のいい女を演じ続けているのは、やっぱり、私が好きだからなんだと思う。


本当に、我が侭で勝手な人だなぁ。


でも私は、夢の続きが知りたくて、今、この場所にいる。