だって、本当の事なんて宗助には言えない。


彼氏のキスマークの上にキスマークをつけられました。
しかも相手は職場の上司です。


うん、言えない…。


そんなこと、いろんな意味で報告なんて出来ないでしょう。


『宗助、ありがと。
今さらデートとかいわれちゃうとなんか恥ずかしいけど、週末は予定あけとくね』


私は、無難なメールを返した。



今日は何も考えたくない。

帰りの道中に、スパやマッサージ、スポーツクラブが目についたけれど、どれも私を動かす原動力にはならなかった。










翌日も翌々日も、私は一人、ひっそりとした部屋の中で仕事を続けた。


その間、悪魔からは、戻ってこいだとか、一緒にこいだとかの連絡はない。


それは、会わないでいいという安心感と、それと同じくらいの寂しさが混ざる、不思議な想いを心に抱かせた。


今のところ、私の仕事に支障はない。


―――松本さんにとって、私は、いてもいなくても関係ないんだわ。


その事実を実感した途端、虚しさと、悔しさが胸を覆う。


仕事をミスした時とも違う。
今までとは、違う気持ち。


一体、私はどうしてしまったんだろう。