コイアイ〜幸せ〜

「早見チーフ、どうしましたか?」


俺と早見との間には、距離がある。
今は、お互いに壁にもたれかかっている状態だった。


「松本さんがこの会社に来てから随分と業績は上がりました。けれど俺には、まだ満足していないように見える」


「えぇ、そうかもしれませんね」


「…俺は、貴方が目指している所を知りたい」


ゆっくりと、一つ一つの言葉を確認するように話しかけられる。


「それを知って何になるんです」


「俺にはわからない景色なんだ、前々から社員として、男として一度聞いてみたいと思っていたんですよ。貴方には、一体何が見えているんだろうって」


俺の見えている景色、ですか。


それなら見えていますよ。


上に立つ者がみる、栄光と欲望の世界。
この小さな会社を拡大し、世界に通用する企業に俺がしてみせる。


そして、それを動かしていくのは、この俺です。


「貴方は優秀な部下ですからね、答えてあげましょうか。俺が目指しているのは、世界に通用する企業ですよ。なにも、すぐに出来ると思ってはいません。会社の形が変わっても構いません、人は、登れる階段があったら、登りたくなるとは思いませんか?」