コイアイ〜幸せ〜

「上司に向かって失礼ですよね。何があったのか私にはわかりませんが、私は鈴木さんとは違いますから、迷惑をかけるつもりはありませんよ」


市田美波は、小声でそれだけ言うとまた歩き出した。


俺は、今回の件の真相を発表するつもりはない。
二人は処分するが、データ流出の理由は闇に葬り去るつもりでいる。


ただ彼女は、事件の関係者が受付けの鈴木と言うことを知って、鈴木が自分と同じ立場だったと推理したに違いない。


そして、それは正解だ。


その上で、自分は迷惑をかけないと俺に伝えてきたのだ。


外見しか知らなかった彼女の中身を、少しだけ見せられたような気がした。


そして、俺が疲れているように見えている?


休日出勤ごときで疲れるわけがない。
体調管理は万全なはずだ。
一体、彼女は俺の何を見て疲れているなんて評価をしたのだろうか。


俺は、市田と向き合うつもりはまったく無いが、そんな疑問を浮かべつつ執務室に戻った。