コイアイ〜幸せ〜

ソレは、俺が見たことのない幸せそうな女の顔だった。


男に媚ず、ただ、完全に相手を信頼する姿。
早見の方も、口数は少ないけれど、愛しい女を見守る目だ。


俺には向けられない、その視線。


午後の打ち合わせを確認しようと思ったのだが、話しかける気が起こらなくなった。


そして、俺は静かに立ち去ろうとした。


「松本さん、会議は2時からでしたよね。それまでには戻ります、プレゼン用の書類はファイルの二番目に入っていますので」


そんな俺に声をかけてきたのは、山下つららだった。
その瞳は、完全に部下の瞳に戻っている。


しかも、奪ったおあげはすでに食べ終わっていた。


あぁ、二人の邪魔をしてしまいましたね。


早見宗助の方は、なにか言いたそうな、少し警戒した眼差しをこちらに向けている。




「こんな所にいたんですね、今、気がつきました。書類にはもう目を通しましたよ、会議の前に、セキュリティーの方はどうなっているのか確認したいので、報告のほうをよろしくお願いします」


まるで、今まで気がつかなかったかのようにサラリと話をしてから、俺は食堂を後にした。