コイアイ〜幸せ〜

信じられない!
この人が、山下秘書に怒られるなんて!


なんか全然想像がつかないんですけれど。


「あぁこれです。市田さん、どうもありがとう」


でも、それよりも。
彼が、私の名前を知っていたことの方が驚いた。


「私の名前、知っていたんですか?」


素朴な疑問をつい口にしてしまった。

彼は、当然だとばかりに私に笑いかける。


「俺の会社の社員ですよ。知らないはずはないじゃないですか」


ドクン。
また一つ、心が大きく震えだす。

会社の上にいる人が、社員全員を覚えているはずはないでしょう。
すごく多人数なんだし、新しく来たうちのチーフだって、部署全員の名前なんてあやふやだもの。



でも、もしもそれが本当だったら・・・。

俺の会社、俺のものだから知っていて当然、なんて・・・。


―――なんて独占欲の強い人なんだろう。



でもこれは、私が彼を知るチャンスなのかもしれない。




「お願いがあります。私、松本さんのことが知りたいんです、私に教えてはくれませんか」


松本さんの袖を引っ張りながら、思い切って言ってしまった。


「とりあえず今日は遅いですし、危ないですから送っていきますよ」