「んっ・・・」


パッパァー。

車のクラクションが、信号が青に変わったことを知らせてくる。


「・・・んっ・・・ふぁっ」


俺は充分に、柔らかい感触を堪能したあと、ゆっくりと唇を離した。


大きな瞳がうるんでいる。
さっきまで触れていた唇が濡れていて、俺の身体がゾクリとした。

そういえば、こんな姿のつららさんは初めて見る。


まだ足りない、そう思う自分と、急に恥ずかしくなってしまった自分がいて、困惑のまま車のアクセルを踏んだ。


「きゅ・・・急に、何・・・?」


これでもまだわからないのか?


「車から降りるなよ。まだ走ってんだからな」


つららさんは、大人しくうなずく。


「家まで送ってやるから、ちゃんと聞け。・・・俺は、仲間としてのお前も大切だが、女としてのお前も大切だ。つららさん・・・ずっと好きだったんだ」


つららさんの肩が、ピクリと震える。
曖昧な感情で逃げられないように、言葉で道を塞いだ。


「俺はもう、この気持ちからは逃げない。たとえ、つららさんがどんな奴を好きでいようとな」


本当は、家までなんて送りたくはなかった。このまま、俺の物にしたかった。
それを止めたのは、なけなしの理性だ。