「伽羅ちゃんが家に来たのは、2月初めだったかな。
その頃の彼女は、酷くてね…。
息苦しさと吐き気で、ずっと、ずっと苦しそうだった」


うつむき、茜は瓶を持つ手が微かに震えた。
 
青磁はそんな姉と伽羅を憶い、瞼を閉じる。


「ーそうして、雪の季節は長く短く過ぎて…、この庭の桜が咲き始めた頃に、伽羅ちゃんを縁側に誘ったの。
少しでも苦しさが紛れてくれれば、と思って」


「…茜姉の想いは通じたんだな」
 
 少し微笑浮かべ、青磁は穏やかに話す。



「…でも、私は怖いのよ。
この桜が散ってしまったら、あの子……


どうなるのかしらー」