「なんでさぁ、杏は毎日ここに来るの?」 「分からない?」 「どうだろう? 僕がほっとけないの? 天使だから」 「天使だから、ねぇ…… 世界にはもっと不幸な人が たくさんいるわ。 それにあなたは 自分を不幸だと思わないから あなたに私は必要ない」 杏は そこまで言って 結論は言わない 「答えは自分で出せと?」 「そうね」 杏の長い栗色の髪が 風と踊る 不意に 触れたい、と思った