「魂を抜かれている。たぶん、あのグレムリンは殺されるときには、魂盗みの呪文が発現するよう、あらかじめ仕組まれていたんだな。そして、もう一匹が彼の魂を持ち帰ったのか」

 王子がグレムリンの一匹を斬ったときに出た光。あれこそが曲せ者だったのであろう。

 メディアの頬が激しい怒りに上気する。膝の上に乗っているロランツの頭をきわめて慎重な手つきでおろすと、すっくりと立ち上がった。両手が握りしめられ、こぶしが作られる。

「許さない! こんなことをやったやつ、ゼッタイっ、ただではすまさないわ」

 魂を抜かれた人間の肉体は、一両日中に魂が戻らぬ限り、いずれは朽ち果てるしかないのだ。

「メディア、あまりかっかするんじゃない」

 ラムルダがメディアをたしなめる。犯人はメディアのこういう反応を予測して、ことを運んでいるように思えてならなかった。

「なに言ってるのよ。私のいるほんの目と鼻の先で、しかもあんなふうに水晶球で事の次第を見せつけられて、このまま黙っていられるもんですか。これは私に対する宣戦布告だわ」