その後、彼女はロランツ王子の婚約者としてウィルランドの王城で暮らすことになったのだが、典雅な宮廷生活の上に半強制的な花嫁修業である。生まれつきがさつなメディアの気性に合うわけがない。

 しかし、だからと言って自分から要求したものを、今更いらないといえるほどメディアは素直でもない。

 それで何とか向こうから断ってくるように色々と画策したのだが、ことごとく上手く行かず失敗の度に魔法院に愚痴をこぼしに来るというのが日課のように続いているのだ。

 しかもまめというか何とか言うか、ロランツ王子のお迎えつきと来る。それなりに忙しい院長にとっていい迷惑である。

「まったく、君は相変わらず意地っ張りだな」

 彼はそこでちょっと言葉を切り、人の悪い表情を浮かべた。

「で、一体、君自身はあの王子さんのことどう思っているんだ?」

「どうって?」

「つまり、肝心なのは君が彼を好きか嫌いか、愛しているか、いないかということだろ。嫌いならさっさと別れてしまえばいいし、好きなら四の五の言わずに一緒になってしまえばいい。私の見る限りでは、あの王子さん、君にぞっこんだ。それで問題ないだろう」

「何よ、それっ!」

 顔を真っ赤にしてメディアは抗議する。

「そんなことありえるわけないでしょ。あの人ってば、私をからかってばっかりなのよ。ああっー、もう思い出しただけで腹が立つっ!」

「じゃあ、嫌いなわけだ」

 ラムルダがあっさりと断定すると、メディアは嘘みたいにおとなしくうなだれた。

「そう言うわけでも……」

(おやおや)

 ラムルダは心中で苦笑を禁じ得ない。けっきょくのところ、メディアは自分自身の気持ちをよく理解していないために、どう対処したらよいのかわからずにいるのだ。

 と、ラムルダの注意がメディアからそれた。