「ロランツ?」

 喜々として部屋に飛び込んだメディアだったが、王子はまだベッドに横たわったまま意識が戻っていないようだった。

「ロランツ、ロランツってば」

 何度も呼びかけて、果ては揺さぶってみるが、反応がない。

「うそでしょう?」

(だめだったって言うの?)

 胸に不安がいっぱいに広がる。

「ちょっとやめてよね。またおどかそうって言うんでしょう。冗談にしたって、質悪いわよ」

 そう言い募ってみても、王子はさっぱり目を覚まそうとしない。長い銀の睫毛は、優雅な曲線を描く頬に影を落としたまま、ぴくりとも動こうとしなかった。

「な、なによ。人がせっかく必死でがんばって、魂、取り戻したっていうのに、なんなのよ!」

 理不尽な悲しみに涙声で怒りながら、メディアはふとんの端を握りしめ、崩れるように床に膝をつき、ベッドに顔を埋めた。

「うそよ! そんなのって、ひどすぎる」