「心配に決まっておる。もし、あれに死なれでもしたら、優雅な隠退生活が送れないではないか」

「なっ」

 あまりにとんでもない王の返答に、メディアは絶句する。

「結婚させたら、さっさと王位を継がせて、余は優雅に余生を后とともに過ごす予定だったのだ。他に王子はいないし、予定が狂ってしまうではないか。そうだ。いっそのこと、メディア殿を養女に迎えて、王位を継いでもらうか。魔女王の誕生。うん、おもしろい。そうしよう」

「おもしろいって、あんたねぇ、勝手に決めないでよっ!」

「おや、メディア殿は、このウィルランドが欲しかったんじゃないのか?」

「そ、それはっ」

 またも絶句してしまう。たしかにそのようなことをぶちあげたことは確かだ。

「そ、それは、それで、だからっ」

 狼狽えて、わけのわからないことを口走る。

 そんなメディアに、ふと王は優しく笑いかけた。

「メディア殿は心底ロランツのことを心配してくれているのだな。そんなにも思われて、あれも幸せものだ」

「私は……」

 見る見る耳まで真っ赤になるメディアに、優しげな視線を投げかけて王は言った。

「余とて、人の親だ。我が子が心配でないわけではない。だから、こうやって気を紛らわせているのだ」

 はっと我に返って、メディアは叫んだ。

「それって、私で遊んでるってことっ!」

「そうとも言うな」

 しれっと王が言った瞬間、ふいに大きな音を立てて、扉が開いた。