部屋の外の廊下でメディアは何をするまでもなく、うろうろと歩き回っていた。
 中ではラムルダがロランツ王子の魂を肉体に戻すための魔法を使っているはずである。

 メディアも本当は中で立ち会いたかったのだが、『邪魔!』の一言でつまみ出されてしまった。

 魂戻しの呪文は繊細で微妙な技術を要するので、ラムルダのような優れた技量を持つ魔法使いでなければ無理だった。メディアのように桁外れの魔力を持つものの、ろくに制御もできず、得意なのは攻撃呪文だけという魔法使いでは、この場合何の役にも立たない。

 それはメディアにもわかっていた。人には得手不得手というものがある。

 けれど、なにも人を伝染病患者か何かのように追い出すこともないんじゃないかと、メディアは思う。

 ラムルダが言うには、彼女は無意識のうちに魔力を放出しているので、微妙な作業に影響を与えかねないという。

 いくら何でもそこまで節操のないことはしていないつもりだったメディアは、大むくれだった。

 もっとも追い出されたのが、自分だけではなかったことには、少しは気をよくした。国王陛下でさえ、にべもなく追い出されてしまったのだ。

「うーん、口惜しい。魂戻しの秘術とやら、どのようなものか見てみたかったものを」

 メディアと同じようにやっぱり扉の側をうろつくしか能のないミレド二世が、ぶつぶつとつぶやくのが、彼女の癇に障った。

「ちょっと、あんた、少しは自分の息子が心配じゃないの?」

 たとえ相手が一国の王であっても、メディアの舌鋒に遠慮はない。