「魂を奪われて眠りこけてる王子なぞ、そうそう見られるものではないぞ。願うことならその現場に居合わせてみたかったものだ。さぞや見物であったろうに。そうだ。今度、もし何かことを起こすときは、余の目の前でやるように、その魔法使いだかなんだかに言っておいてくれ」

 もしかして、この人の究極の判断基準と言うものは、おもしろい、おもしろくない、というその1点に収束されるのではないかと、ラムルダは頭を抱えたくなった。一般庶民ならともかく、一国の王である。そんな単純なことで物事を判断されてはたまらない。あのメディアが変人の親玉と呼ぶはずである。いや、それともこれもかれの手なのか。

 困惑する彼を後目に、王は再び王子の顔をのぞき込んだ。

「魂を抜かれるなど油断するから悪いのだ。それを自分はのうのうと寝ておって」

 無茶なことを言いながら、ぺち、と、も、ひとつ頬をたたく。

「婚約者に働かせるとは何事だ」

「陛下?」

「このまま死んでみろ。余は妃に殺されるぞ」

 それは深い慈愛に満ちた声で、ラムルダはますますこの王がわからなくなった。