魔法使いがこの世を支配した時代があった。

 今は『果ての森』と呼ばれるところに、人界と、それとは異質な空間である魔界をつなぐ穴が出現したときに、それがはじまった。

 異質な空間同士がふれあって生じた歪みがそのものが、強大なエネルギーを人の世にもたらした。当時の魔法使いたちは、自らが生まれもった魔力とは別に、このエネルギーを利用し、さらに強大な存在と化し、その底の知れない力を持って、人の世を支配したのだ。

 しかも、彼らはそれだけでは満足しなかった。互いの領地を賭けて、ゲームを始めた。
 魔力よって独自の生き物を創造した。神の領域に踏み込んだのだ。

 必要とあれば、生きたままの人間ですら改造した。そうして、創り出した生き物同士を戦わせ、買った方が負けた方の領地を取った。

 ドラゴンやワイバーンなどというような生き物が創造されたのもこの時代だった。
 出来損なったり、言うことを聞かない生き物たちは、みな魔界に投げ捨てられた。魔界に行って戻ってきたものはいない。魔力の源とはいえ、そこは恰好のゴミ捨て場となったのだ。

 良識のある魔法使いもいなかったわけではなかったが、彼らはあくまで少数派でしかなかった。また、その当時には魔法使いの行動を律する魔法院というものも存在していなかった。まったくのやりたい放題好き放題だったのだ。

 こうして、魔法使いたちの力による恐怖政治は長く続いた。

 魔力を持たぬ多くの人々にとっては、つらく暗い時代。
 のちに『黒魔法の世』と呼ばれる時代である。