「そ、そういう場合ではないと思うのですが」

「うーむ、白粉と口紅の方がいいか? これは妃似だから、よく似合うと思うぞ」

「だから、そういう問題でもないかと」

「ふむ」

 ふいに王は真顔になった。

「そなた、物事の責任を何でも自分一人で背負い込むものではないぞ。一人で背負える荷には限度がある。人生は短い。楽しまなければ損だ」

 だからって、魂を抜かれて意識のない自分の息子の顔で遊ぼうとしないで欲しいと、ラムルダは切実に願ったが、何せ相手は一国の国王だ。さすがにつっこめずに、ただあきれていると、王は意外な追い打ちをかけてきた。 

「『黒魔法の世』から何百年になる? もうほとんどのものが忘れたというのに、いまだにこだわり続けているのは、魔法使い、そなたたち自身だ。もう大概に自分自身を罰するのは止したらどうなのだ?」