連絡を受けて、ロランツの父、ミレド2世がお忍びで魔法院に駆けつけてきた。
 さすがに非常事態とあって、いつものにこにこ顔ではなかった。

 ふわふわの金髪につるつるとして血色がよいため、しっかりと鼻の下にひげを蓄えているというのに、赤ん坊を思わせる丸顔を曇らせて、魂を奪われ眠る王子の顔をのぞきこんだ。

 そして、ひとつ唸る。

「うーん」

 ラムルダは思わずその側で身を縮める。ヴィゼかどうかはともかく、彼が監督すべき魔法使いたちのだれかの不始末であるには違いない。とうぜんラムルダにも責任がないわけではないのだ。

「なんだか、ずいぶん気持ちよさそうに寝ているな」

 王はぺちぺちと王子の秀麗な顔を叩くと、いつもの愛想の良いにこにこ顔に戻った。

「おっ、ほんとに起きないな」

「陛下?」

「いや、これでけっこう目ざといものでな。こんな機会でもないと、滅多に寝顔なぞ見せてくれん。さて、どうしてくれよう。うむ、ペンか何かあるまいか」

「何されるんですか?」

 いやな予感を感じながらも尋ねる。

 王は胸をはって答えた。

「もちろん、ラクガキするのだ」