メディアは注意を果ての森にすぐ側に建てられた古い城にむけた。
 
 城と言うより、小さな砦というの方が、似合う建物だった。

 以前と変わったといえば、あざやかな緑の木々がその古城を埋もれさせようとするかのように、鬱蒼と生い茂っていたことであった。

 この前、ここに来たときには、こんなふうではなかった。たった一年あまりでこれほど、木が成長するものだろうか。その木々は彼女の知らない種類のもので、結論は出せない。けれど、なぜかその緑はあまりに鮮やかすぎて、目に厭わしいほどであった。

 この城こそが、『果ての森』の中に封じられた魔界の出入り口を、監視する番人でもある魔法使いヴィゼの住まうところだった。

 ヴィゼは、悪く言えば変わり者ぞろい、よく言えば、個性的な魔法使いたちの中にあって、比較的物静かで常識的な人物だった。それゆえに、果ての森の番人の役を任ぜられたのだったのだが、いまのメディアには彼は倒すべき敵としか、考えられなかった。

 生きた人間から、魂を奪えるほどの微妙な技術を有する魔法を使えるものは多くはない。メディア自身も生まれ持った魔力が大きすぎるため、繊細さを必要とする魔法は苦手であるし、出来もしなかった。

 しかも、グレムリンを使い魔として飼っている魔法使いは、メディアの知る限りヴィゼだけだった。これ以上の状況証拠はない。

 メディアは用心深く、城の周りを一度旋回してみたが、意を決して降りていった。