春樹と初めての温泉旅行

と言うより、人生初めて好きな人と旅行。

それも春樹からのお誘い。私は胸がドキドキした。

この一泊二日の間は、春樹の頭の中を、私で埋めたい。
いや、9割でも、8割でもいい。
いつもより少しでも多く、春樹の頭の中に私の存在を入れたい。


そして私も、嫌な事を考えずに、春樹を好きだと思う気持ちだけで満たされていたいんだ。


私は、すぐ目の前に来てる春樹との幸せな時間を夢見て、荷物を持ち家の戸を開けた。

目の前に見慣れた黒い車。
運転席にサングラスをかけた男性。
窓が開いて、タバコの煙が車の中から空へと登っていく。


『…おはよ。』






春樹…


ねぇ 春樹…


私この2日間は、ずっと笑っていれると思った。元カノに対する不安や心配も、全て吹き飛ばして、春樹と幸せな時間を刻むんだ。

春樹が誘ってくれたこの2日間を、大切にするんだ。


春樹…


同じ夢を見れてないのかな私達。



私は、この先の涙など予想出来るわけ無かった。

私は脳天気に、幸せそうな笑顔で愛しい男性の車へと乗り込んだ。