春樹は佐藤さんの顎から手を放し、下から睨み上げる。


『そんなにコイツを追いかけたい?
そんなに死にてぇの?』


佐藤さんは黙ったまま下を向いている。



それがまた春樹に火を付けたのか

再び春樹は顎を力一杯掴み上げた。

『何黙ってんのよ?』



恐らく春樹の力で掴まれたら、
手放された所で痛みで話せないんじゃないか。



春樹はまた手を放したが

結局佐藤さんは口を開く事は無かった。




『近寄るな。 分かったら帰れ。』



そして佐藤さんは、何も言わないまま

去って行った。




そしてこの後


佐藤さんから電話もメールも

もちろん会う事も



無かった。