『…好きだよ。』

抱きしめられながら春樹は想いを口にした。

春樹は好きとか、滅多に言わない。

言ったとしても、恥ずかしさで言った直後に冗談を付けて笑い話にする。


普段から男らしく、ちょっと突っ張って、後輩からも憧れの存在としてる春樹だから

そんな人が女にデレデレ・ベタベタしてるのなんてプライド的に許されないとか、

黙っていながらも女が後ろを歩いてくる

そんな姿が一番合うのだと

いつか春樹の友人が私に話してくれた事がある。


だから、私が不安がる時以外は、好きだと言ってこない。



この時春樹は、何を思いながら好きだと、伝えてくれたの?







…そして春樹がゆっくり上半身を起こして

私の上に被さり

上から私を見下ろす。

その冷たく真剣な目つきが

大好きなの。

虜にさせられるの。


「…春樹…。」


春樹は何も言わず黙って

私の唇を奪った。