先生の秘密



先生は、ありがとうとクルリちゃんにお礼を言うと、私の方を振り返って、


「あ、本庄」


「うはぃ?」


いきなり呼び掛けられて、変な声が出てしまった。


思わず口を押さえると、先生はクスリと柔らかい微笑みを見せた。


(…う、わ)


何か、知らないけど。


くすぐったい感じ。


「勉強、はかどってんの?」


「も、もちろんですよ!」


半分、嘘だけど。


宿題だって一人じゃまだろくにできない始末。


この様子じゃあ、考査も先生の期待には沿えないかもしれない。


「あんま、無理すんなよ?」


ぽん、と頭に手を置かれる。


それだけで、何故かほっとする。


「じゃあ、俺はそろそろ」


そう言って、更に言葉を続けようとした先生を遮る無粋な、扉を勢いよく開く音が、教会中に響き渡った。


バーン!!


効果音をつけるなら、こんな感じだろう。


「「ふーちゃん、めっけ!」」


全く同じ声で、全く同じタイミングで、全く同じ言葉を放った二人の女性――否、少女が現れた。