先生の秘密



「(藤島先生……)」


多分、霞さんの差し金だ。

霞さんと藤島先生は仲がいいみたいだったから。


私達をからかう意味でも連れて来たのだろう。


でも、


よりによって、孤児院に連れてくるなんて。


藤島先生に聞かれたら何て説明すればいいの…!?


ピアノの音もやみ、私はその場で呆然と先生を見る。


先生も、私から視線を外さなかった。


というより、外せないといった感じだった。


先生は椅子に座ることもせずに、ただそこに突っ立っていた。



パチパチと拍手がまばらに聞こえ、シスターの一礼で演奏は終わる。


扉が開かれ、聴衆もほとんどが教会から出ていき、人が少なくなっても、先生はまだそこにいた。


「藤島先生、どうしてここに」


「いや、それはこっちの台詞なんだけど…」


何とも言えない空気が漂う。


気恥ずかしいやら、戸惑いやらで、どう言っていいか分からない。


「藤島先生、どうせ霞さんから連れられて来たんでしょう?」


「へ?理事長?いや、俺は知り合いに、だな」


聖の言葉に首を傾げる先生と、その返事に首を傾げる私達。


霞さんの差し金じゃなかったのか?