「しかし二人きりになる必要がどこに」


「お前、入学式のときから大体予想していたんだろう?」


ギクリ、とした。


いつから先生が内海先輩を好きだと気づいたと聞かれたとき、沈黙でうやむやにしていたはずなんだけど。


「一瞬内海に見惚れたとき、ヤバいと思って見渡したらお前と目が合ったろ?ポーカーフェイス意識してたんだが、まさか本当に気づかれているとは思わなかった」


「いやいや、先生は完璧なポーカーフェイスでしたよ?多分、私以外気づいていた人はいないと思います」


「だからだよ」


ん?といまいち要領を得ない先生の物言いに首を傾げる。


「俺のポーカーフェイスを見破ったやつなんて、お前で二人目だからな。ちょっと気になったんだよ」


言おうとして、やめた。


こんなこと言ったところで先生はただ困惑するだけだろうし。


今更、自分の身につけてしまった能力を否定する必要もない。


もう何年経った。


私には友達もいるし、助けてくれた恩人もいる。


昔の思い出だ。
いつかは解決しなくてはならない、毒。


だから、私は別の言葉を放った。


「こんな私でよかったら、いつでも頼ってください」


何だか我ながら、プロポーズの返事みたいになってしまった。


内心苦笑しながら、先生を真正面から見つめると、少しだけ驚いたような表情をした先生と目が合った。


どうか、面倒なことに巻き込まれないようにと願いながら。