………。


シン、とリノリウムの廊下に沈黙が落ちる。


僅かに首を傾げて先生の顔を覗きこんだ。


「先生?」


先生は何故か何とも言えない微妙な表情で頬を赤く染めていた。


これは…、

なんというか。


うん、前々から思っていたけれど。



「先生…


内海先輩のこと好きなんですか?」


ブフッ、とそれまで固まっていた先生が突然吹き出した。


形のいい眉を限界まで吊り上げて、俳優のように整った顔を驚きに歪ませている。


百面相、面白いなぁ。


「な、なん」


「先生いくらなんでも分かりやすすぎですよ…」


私が呆れた声を出すと、先生は慌てた様子で近くの教室に鍵を開けて潜りこんだ。


当然、私も引っ張られるような形で閉じ込められたわけで。


バタン…。


背後の扉が無情にも閉まる音に、内心心臓が落ち着きなく鼓動を刻む。


何、これ。


え、どういう状況?


「いつから」


恐ろしく低い声が目の前の教師のものとは思いたくなくて、足元に視線を落としたまま微動だにしなかった。


何をそんなに怒ってらっしゃるんだ、とか。


そんなキャラだっけ?とか。


現実逃避に向かうための疑問ならいくらでも沸いてくるけれど、肝心のこの状況をどうにかする術なんか私には見つかるわけもなくて。


先生が今どんな表情をしているのかも分からずに、ただ時が過ぎるのを待ち続けた。