「ったくしょうがねぇなぁ。おら、半分渡せ」


先生はそう言って私の持つ教材の半分以上を取る。


…意外と優しいのかもしれない。
なんて、自分でも思う。現金だ。


私の歩幅に合わせるように少し先を歩く。


「くそう…」


絵になるのが何となく悔しい。


「あら、藤島先生じゃないですか」


その時、聞き覚えのある凜とした声に顔を上げた。


ほんわかとした中に芯の強さを感じる絶世の美女。


我が校の誇る生けるクレオパトラこと、生徒会長の内海七緒先輩。


「もうすぐ本鈴鳴りますよ。急いだ方がいいのでは?」


にこり、と微笑む様もつい見とれてしまう。


会長はどうやら生徒会室にいたらしい。


その後から出てきたのは、痩身の可愛らしい男子だった。


ネクタイの色からしてどうやら一年のようだ。


反抗的な目で私と先生を一睨みすると、会長に会釈を残してそのまま足早に去っていった。


「あいつは?」


「あぁ…雑務の津川くんですよ」


「新入生まで生徒会に引きこんでんのか?」


「彼が生徒会に入りたいって申告してきたんです」


「ふーん…珍しいやつ」


「じゃあ、私はこれで」


会長はそう言うと、生徒会室の鍵を締め一年がしたように会釈をして私達の隣を横切っていった。