先生の秘密



「何か悩み事かな、お嬢さん?」


バッ、と勢いよく振り向く私に、相手はおっと、と少しのけ反った。


意外な、今日出会ったばかりの顔が、そこにあった。


「支倉…さん?」


「覚えててくれたんだぁ」


ニッコリと微笑む、津川くんによれば確か、支倉さん。


でも、


(あれ…?)


朝に会ったときと、どことなく違和感が拭えない。


何かが、違う。


「あ!眼鏡」


「うん?あぁ、これ?」


支倉さんの指し示す眼鏡が、朝にはかけられていなかった。


と、いうより、全体的なイメージが、変わっている。


襟足まであった髪は一つに纏められ、着崩した制服も、今はカジュアルな私服になっている。


朝も相当イケメンっぷりを発揮していたが、この落ち着いた私服では、大人っぽさが倍増して更に美形に磨きがかかっている。


正直、直視できない。


「ふふ、似合う?」


無邪気な笑みを浮かべたまま、くいと眼鏡を上げる支倉さん。


なぜわざわざチャラい男の格好なんてしてるんだ、と言いたくなるくらい似合っている。