ユキは2度目は言わなかった。

俺が聞こえていないと知ったか、それとも聞こえないふりをしたのに気づいたのか
わからない。

その言葉はもう2度と聞くことはなかった。

その後は、普通にくだらない話をしていたと思う。


ただ、その次の日ぐらい、いや、卒業が近づくにつれて段々と
ユキは俺と一緒にいる時間が減っていった。

そして、中学に進学した時はお互い連絡を取り合うことも無くなり、
そのままユキと俺との友情は終わった。


今、思うとユキは気づいていたのかもしれない。

俺がユキの気持ちから逃げたことを。


俺もユキのことが好きだった。ただ、当時俺はまだガキ過ぎた。
恋愛という感情を彼女に抱いたのは卒業して、会えなくなってやっと
気づいたんだ。

遅かった。俺はその時自分に腹が立った。
両想いになれたから?いや、そうじゃない。

好きなアイツの気持ちに対して、ちゃんと答えてやれず
聞こえないふりで逃げたことが許せなかった。