「バレちゃい、ましたか…」
「いずれにせよバレるさ。君と神田は同級生だし、俺も調べようとすれば調べられるし。」
「怒ってます?」
「いや?別に」
「…わかってるんですよね?私の家の事も。」
「…あぁ」
彼女の身元。
彼女は確か……
「私は…夏梨名流華道、夏梨名家現当主、夏梨名真の娘です。」
夏梨名 真
カリナ マコト
夏梨名家は代々続く華道家で、夏梨名真は四代目だ。
夏梨名ちゃんは夏梨名流の一人娘。
「ごめんなさい。黙ってて。」
「いや、こっちも君の名前を間違えてた訳だし。」
「…夏梨名という名が嫌いでした。」
幼い頃からの教育。
流派に固執して、人の考えを聞かない父親。
そんな父に何も言えず見ているだけの人形のような母親。
父のいう通りに決められたレールの上を歩く兄。
「息苦しかった…夏梨名というだけで特別扱いしてくる教師や友人。だから夏梨名と呼ばれるのが嫌いなんです。」
…だから神田をいじめてたのか。
「…今は、1人暮らしなんだよね。」
「高校卒業と同時に、家を出ましたから。もう家とは関わりを持っていないんです。」
「そぅ……」
悲しそうに笑う、彼女の顔が、あまりにも切なくて……
「1人で、よく頑張ってたね。」
ポンと、夏梨名ちゃんの頭の上に手を置く。


