秘 め ご と 。



下駄箱で、靴を履き変えていると


「…うあ。噂をすればじゃん」


綾瀬くんの見ている方向に視線を送る。


グレーのスーツにコバルトブルーのネクタイをした


朝から冷気を放つ先生。


…こっち近寄ってくるし。


段々と近づいてくる先生に私だけでなく、綾瀬くんもドキドキしているのがわかる。



「…片桐。」

低くて、少し掠れてる先生の声。

先生は、立ち止まっていた私の真横で止まると


手を差し出した。



「忘れ物。」



―あ。

私の携帯。


すっかり忘れてた

目の前のホワイトの携帯を手に取り
軽くお礼を言う。


先生は、口角を少し上げるとそのまま去って行った。