『…1年も離れた甲斐があった。』
ケイの胸に抱き寄せられて、広い胸板に頬を寄せると、ホッとため息をつくように、頭上からケイの言葉が降って来た。
まるで私にこう言わせる為に1年も離れたみたいな言い方だった。
「…ケイ?それ…どういう意味?」
訳が分からなくて、抱き寄せられたケイの胸から顔を上げて見上げる。
『ん?エリカに素直になって貰おうと思って。』
「それって…私にそう言わせるために、わざと距離を置いたって事?」
『まぁな…、おかげでエリカはオレ無しじゃ生きて行けなくなった。この1年オレの事ばかり考えて、オレで心がいっぱいになっただろう?』
ケイって男は…
全く信じられない。
誰にでも分け隔てなく優しいかと思えば、私には信じられない程残酷な事をしてくれる。



