「…別に。礼を言われるほどの事じゃないし」
あいつは、また素っ気なく答えた。
「唄ちゃんっ!」
佳奈が泣きながら抱きついてきた。
「佳奈!」
「…よかった。無事で…本当によかった!」
「佳奈…ごめんね」
佳奈を泣かしてしまったのは、これで2回目。
1回目は中学の時。先輩たちに呼び出され大ゲンカになった。
その時に、佳奈を心配させ泣かせてしまった。
「もう無茶しないでね」
佳奈は、あたしに言ってきた。
「うん」
あたしは、佳奈の頭をなでながら言った。
「あの…助けてくれてありがとうございました」
佳奈は、あいつにお礼を言っていた。
「…別に俺は、ただ通りかかっただけだし」
あいつは、あたしの時と同じように答えた。
「じゃ、あたし達帰るから」
「あぁ。気をつけて帰れよ」
「うん」
「失礼します」
私たちは急いで、駐輪場に向かった。
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「ふぅ~。今日は、いろいろと疲れた~」
佳奈を途中まで送り、家に帰ってきた。
今日の出来事は、お父さん達に黙っておこう。
あたしは、誰かに心配されるのが嫌な性格。いろいろとみんなに黙っている。
そう考えながらあたしは、ベッドの上に寝転んだ。
…まさか、あいつが助けてくれるとは。
あたしは、ちょっと意外だった。
あいつと初めて会ったときは最悪だと思ったけど、今日助けてもらい、少し見直した。
案外いい奴なのかな。
それに、格好良かったし。
ん?格好良かった……?
「だーーー!なに言ってるのあたし?!」
「うるせぇいッ!」
音夜が勝手にあたしの部屋に入ってきた。

