君に幸せの唄を奏でよう。




「今日のところは、こんな感じかな」

浩ちゃんが、つぶやいた。曲の練習も終わり、一段落ついたところ。

「なんか今日は、すごくよかったね。直すところもなかったし。浩ちゃんはどう?」

佳奈は、浩ちゃんに聞いた。

「別になかったと思うけど。あっ、後……」

浩ちゃんは、佳奈と演奏の話しを始めた。

「お疲れ。今日のお前よかったぞ」

亮太が、とても嬉しそうに声をかけてくれた。

「うん。自分でもいい感じに歌えたと思う。亮太のおかげよ。ありがとう」
「~~お、おうッ」

 亮太が照れた顔をしていた。

「なんで照れてんの?」

あたしは疑問に思い、亮太に聞いてみた。

「~~き、気のせいだろっ!」

怪しい……。明らかに様子がおかしい。目は泳いでるし、顔も赤い。あたしは、亮太をじーっと見つめた。

「2人共、楽器片付けて休憩にしよ。先に上に行ってるから」

浩ちゃんは、そう言って上に行った。

「ほ、ほら、お前もさっさと片付けて上に来いよっ!」

亮太は、凄い速さで、ベースを片付ける。

「あっ!逃げないでよ!」

亮太は、あたしにお構いなしにとっとと、上に行った。あたしと佳奈が防音室に残った。

「どうしたの?」

佳奈が心配そうに聞いてきた。

「それが、バカ亮太の様子が変なのよ」
「変?」

佳奈が不思議そうに聞いてきた。

「何かあたしが、お礼を言ったら凄く照れたりして変なのよ」
「……唄希ちゃん」
「ん?なに?」

急に、佳奈に名前を呼ばれた。

「亮太君が、照れるのは唄希ちゃんだからだよ」

あたしだから照れた…?てか、何であたしだけに照れるの?

佳奈とか浩ちゃんに誉められても照れたりしないのに……。